映画『ゲット・アウト」で主人公を助けるちょっと面白い役柄を演じていたリル・レル・ハウリー。彼が主演を務める新しいホラー映画『ザ・ミル』がディズニープラスにて配信となります。常にハラハラさせられ、夢中にさせられた作品を今回はご紹介します。
『ザ・ミル』あらすじ
ビジネスマンのジョーが目をさますと、そこは刑務所の中。彼が最後に覚えているのは、大手企業マラード社で働き、出世の階段を上り、昇進するための戦略を立てていた記憶。妻は妊娠しており、男の子がすぐに生まれるジョー。彼は理由もわからず刑務所から出られなくなり、そこから出る方法もわからず、パニックに陥ります。ちょうどその時、狭い換気口から別の受刑者の声が聞こえ、自分以外にも大勢の受刑者がいることを知ります。さらに各部屋の壁にはデジタルボードが設置されており、受刑者の日々の仕事が表示され……。
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※ここからは、『ザ・ミル』のネタバレが含まれます。
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受刑者に与えられるタスクは、毎日変わるアルゴリズムに従ってパラメータが設定されていました。独房の中央にはミル(粉とかを作るためのうす器)があり、AIはジョーに、毎日それを回転させ、必要なノルマをこなすように指示します。
ただし、ノルマを超えたとしても、他の受刑者と比べてスコアが最低であれば、解雇される可能性があるといいます。一日の始まりは朝の6時で、受刑者は午後10時まで働かなければなりませんでした。
他の受刑者がどれくらいの点数を取っているのか誰も知らないため、常に不安と焦りがある中働かなければならないジョー。受刑者たちは早朝に水1本と限られた量の食事を与えられ、その後は空腹を感じても何ももらえない状態でした。初日、ジョーのノルマはわずか50回転でしたが、解雇された人々の悲鳴を聞き、自分の安全を確かめたかったことから、倍近くミルを回転させていました。ジョーの隣人は、ジョーが囚われた初日から情報を与えてくれる存在。しかし、彼は名前すらジョーに教えようともしませんでした。
ジョーはあるときペナルティーを受け、その日は2回転を1回転とカウントし、その日のノルマを370回転に増やすことを告げられます。AIがどんな高度なキャリア教育をしているのか、どうやってその仕事をこなすのか、ジョーは理解できませんでした。100回転をこなすのでさえ大変で、体中のエネルギーを使い果たしたのに、今度はその7倍もこなさなければならない。ついにノルマを達成的なかったジョーに対し、マラード社のAIが、やる気を起こさせるために、今度は彼の妻を刑務所に入れるつもりだと彼を脅します。そこでジョーは本気を見せ、その翌日から700回以上ものローテーションをこなすように。
疲れ果てたジョーは、ミルの取手の部分に「ALEX(アレックス)」と彫られていることを知ります。ジョーの隣人は、彼の前に囚われていたアレックスという男が、そこから脱獄できた唯一の人間だと打ち明けます。
柱の裏側にCCTVカメラの死角があり、アレックスはそこに壁の跡をつけていたのです。それを知ったジョーは以前AIから渡されたペンで壁をこすり始めます。ジョーは壁の奥に細いトンネルがあることを知り、中に入ってそこから脱出できるかどうか調べてみることに。ジョーはトンネルを越えるも、看守に捕まり、翌日、気がつくと独房に戻っていました。
そしてジョーの隣人は「共犯者」として足の骨をおられてしまいます。ジョーは、もし受刑者全員が1回転もしないように説得できれば、全員が同じ点数、つまり0点になり、そうすればAIは彼らの誰も解雇することができなくなる、という結論に達します。
ジョーは初めて、AIを味方につけられると確信しますが、その計画も受刑者たちの信頼関係の欠如のために失敗に終わりました。受刑者たちは不安と焦燥に駆られ、一日が終わろうとする頃にミルの持ち回りを始めるのです。ジョーは、足を折られてしまった隣人を助けることができないと意気消沈します。
一方、彼はずっと話していた隣人が、アレックスであることを知ります。アレックスはジョーと共謀したために大きな代償を払わされてしまう・・・このことがきっかけでジョーはAIの命令には従わず、AIに好きなようにさせようと決断します。
案の定、ジョーの処刑を命じられた看守が12人の証人を連れてやってます。ジョーはジョニーという名の警備員を残忍にも殴り倒し、自分から解雇してやると叫びます。するとその直後、現実世界で眠りから覚めた彼は、自分が会社によって運営されているシミュレーションの一部であることに気づくのです。
ジョーは、同じ会社で働いていたジョニーから、自分がシミュレーションの中にいたのはわずか60分だと聞かされます。ジョーの妻はまだ妊娠中。シミュレーションは、候補者に自分の限界を伸ばして会社のために働くという自己進化の過程を経験させるはずのものでしたが、ジョーには逆の影響を与え、彼の感性はすっかり変わってしまうのです。
ジョーは昇進することを告げられ、シミュレーションで並外れた成績を収めたことを知らされます。しかし今、ジョーは自分が生産的であるという名目で何をしてきたかに気づきます。
この作品では、「働くこと」について改めて考えさせられます。確かに、仕事は時に生活の糧を与えてくれますが、問題はそれを必要以上に重要視したときに生じます。階級、昇進などの言葉に操られ、仕事以外の大切なものに気づかないというのは、ある意味人生を損しているのかもしません。げんに、劇中でもアレックスは刑務所でジョーに、自分たちがやった仕事に対して表彰されるとはいえ、具体的な何かを生み出したわけではない、というシーンがあります。
ミルの回転は、多くの人が働く上で直面する「毎日、同じタスク、終わらないタスク」を象徴しているのではないかなと思います。
本作のエンディングで、ジョーはこのめちゃくちゃなシステムから抜け出す決意をするところで終わります。彼が会社を潰せるかどうかはわかりませんが、続編が作られるとしてもなかなか興味深い作品になりそうです。
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